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ミックス上達への道(生ドラム・1)


前回の続きです。いよいよ本編基礎テクニックの具体例 、今回はまず生ドラムについてです。


生ドラムってミキシングする人にとっては花形楽器だと思います。なにせミックスアプローチの違いによってサウンドがいちばん派手に変わりますし、楽曲のサウンドをいちばん左右するのもドラムサウンドです。とはいえドラムサウンドって、特に初めてミックスする人にとってはとても難しく感じますよね。中級や上級の人にとってもドラムサウンドは永遠のテーマだと思います。なのでこの際ドラムミックスの基礎をきちんと考察しましょう。そのためには相手を知ることがいちばんです。



沢山のマイクの役割


生ドラムの収録には通常数多くのマイクが立ちますが、それはドラムキットが沢山の打楽器の集合体だからという側面があります。しかも楽曲の中で他の楽器と合わさったときのドラムの存在感や遠近感を演出するためにはどうしても多くのマイクが必要になります。ドラムがしっかりといい音であることが最終的にいいサウンドの曲になるため重要です。


使用するマイクやセッティングの違いでサウンドは左右されますが、その傾向を知っておくとミキシングで対処できる範囲や限界もわかりますので有益です。



とあるレコーディングでのマイクセッティング風景

それではまずドラムの各マイクがどういう役割を担っているかを見てみましょう。ドラムの収録時によく使うマイクセッティング例として…


皮物のマイク

1:キック

2:スネア(上面、下面の両方にマイクを立てることが多いが、ケースバイケース)

3:タム


金物のマイク

4:ハイハット

5:オーバーヘッド(シンバル類)


ドラムキット全体を狙うマイク

6:ルーム(アンビエンスともいう)


上記のような種類のマイクを立てるケースが多いと思います。



Tips:

オーバーヘッドに加えライドシンバルにも単体でマイクを置くことがありますが、これはライドのリズムが曲の重要な要素を担っている場合の対策です。



これらのマイクがどんな役割でどんな音がするのか、参考ビデオで音を聞いてみます。このビデオの音源では以下のマイクを使用しています。


キック inside Audio-Technica ATM25

キック outside Neumann M49

スネア top Shure SM57

スネア bottom Shure SM57

ハイハット Neumann KM84

タム Sennheiser MD421

オーバーヘッド AKG C414EB P48

アンビエンス Neumann U67


Tips:

各マイクの詳細は上記マイク名称のリンクを参照してください。


元音源は録音時に皮物のみ軽く補正EQが施されコンプレッション無しで収録されてますが、このビデオでは出来るだけ使用したマイクの素性や生音の本質を理解するためそのまま未処理でミックスしてます。それではドラム全体の音や各キットの音を聞いてみましょう。



ビデオ① ドラムのマイクセッティングについて知る




個々のマイクの基本的役割や音の具合、また各キットへの他のキットの音の被り具合などが垣間見れたでしょうか。


ドラムのミックスはマイクの音ももちろん重要ですが、それぞれのマイクへの他の楽器の音の回り込みも肝となります。特に生々しいサウンド方向のアプローチの場合はオーバーヘッドのサウンドが重要になってきます。


オーバーヘッドはセッティングの性質上全てのキットのサウンドが多めに入ってきます。このビデオのオーバーヘッドマイクのセッティングはシンバル上から5〜60cmほどだったと思いますが、例えばオーバーヘッドマイクに入るシンバル以外のキットの音を嫌って出来るだけシンバルにマイクを近づけたいと思っても、複数あるシンバルのバランスが悪くなりますし、シンバル類はマイクが音源に近すぎると意外なほどシンバル自体の好ましく無い低音を拾ってしまうため、総合的に考えてオーバーヘッドマイクは近ければ近いほどいいわけではありません。


結果としてオーバーヘッドに入ってくるシンバル以外のキットの音が、最終的にオンマイクで収録されているキットの音と混ざることになるので、オーバーヘッドの音はドラム全体の音への影響が大きいのです。ですが生々しいサウンド方向のアプローチの場合はこのことを積極的に使います。オーバーヘッドマイクのサウンドをいいサウンドで収録ためのマイクチョイスやセッティングをすることで、ドラムサウンド全体を良質なものにすることにつなげていきます。


これらのマイクとともに、必要あらばアンビエンスマイクを足すことで空間サイズを演出します。タイトな空間を作るのであればアンビエンスマイクは必要なく、反対に大きな空間をつくるのであればアンビエンスを積極的に使います。



では収録するマイクの種類やセッティングが変わるとサウンドはどのように変化するでしょうか?、それを次のビデオで見ていきたいと思います。


このビデオでは、ビデオ①のマイクに加えて次の機種とセッティングを追加しています。


キック inside Electro-Voice RE20

スネア top AKG C414EB P48

ハイハット Shure SM57

タム Neumann U87

オーバーヘッド(near) AKG C451

オーバーヘッド(far) Schoeps CMC56u

アンビエンス(front far) Neumann KM88

アンビエンス(rear) Neumann KM86


Tips:

各マイクの詳細は上記マイク名称のリンクから参照してください。


上記のようにメインのオンマイクには比較用マイクと、オーバーヘッドとアンビエンスには更にセッティング違いも用意しましたので、早速ビデオを見てみましょう。


ビデオ② マイクやセッティングの違いについて知る




個々のマイクを変えるだけでなく、オーバーヘッドのマイクやセッティングを変えるだけでもドラムサウンド全体が変化することが垣間見れたと思います。


また最後の方でマイクの組み合わせ違いでのサウンドの変化も見れますが、もしもこのビデオのようにトラックの中に個別のキットに対し複数のマイクが収録してある場合は、より曲に合うマイクをチョイスしたり、場合によっては同じマイクポジションの複数のマイクをブレンドして使うことも有用です。



今回はここまで、続きをお楽しみに!


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