さぁ、前回の記事で下準備もできました。いよいよミックスの本編に入っていきます。
…と、書いておいていきなり衝撃の事実かもしれませんが、どんなことにも通ずるミックスの画一的な方法論ってあるのでしょうか?、自分はそんなものは無いと考えています。
ミックスの画一的な方法論は無い
もしもそんな方法論があったら既にミックスは完全自動化できるはずですし、現在のテクノロジーはそもそも人の好みや嗜好までをカバーしきれてはいません。先日のLewittのミックスコンテストでみんなが苦労してミックスしたことからもわかると思います。
と、はなから完全否定から始まってしまいましたが、ミックスの手法は人によっても様々、それを聞く側の好みも様々でとても一括りではまとめられないのが事実です。
ただ、王道の手法というのはあります。基本中の基本です。
ポピュラーミュージックだったら例えば周波数バランスに好ましい傾向があります。基本はすべての周波数帯が均一になっていることです。ただしこれはアレンジ的な側面と音色的側面の両方があります。その辺については以前書いたブログで少し触れていますので参照してください。
アナライザーはあくまで目安
周波数バランスの比率は時代とともに多少変わりますが、基本的な傾向はあります。それを探るためにFFTアナライザーを活用している人も多いでしょう。結果としてアナライザーがうまく振れていることは良いです。しかし、それを整えるための手段としてEQに走りすぎるのは危険です。特に例えばその音楽全体の周波数バランスをリファレンス曲にマッチさせるマッチEQを過信すると本来の楽曲の良さが失われる可能性があります。
大事なのは楽器のバランス
大事なのは楽器のバランスです。そこを忘れてはいけません。できるだけバランスで対処し、それを補うため、またそれとは別の音楽の表現方法としてEQを使う…というイメージを忘れないようにしましょう。
アナライザーでいい感じを目指すことに終始すると、必要以上のEQに走りがちになったりと大事なものを見失います。アナライザーはあくまで目安だと思っていましょう。
音楽の多様性を自覚する
例えば同じドラムでも打ち込みと生楽器とでは考慮することが違いますし、ひとつをエフェクトすることが他に波及する度合いも全然違います。音楽によって好ましい楽器バランス、コンプレッションやEQは違ってきますし、極端な例ではそもそもコンプレッションやEQを必要悪と考える音楽性だってあります。
バランスなら、例えば四つ打ちのキックのダンスサウンドではキックがリズムを引っ張っていくバランスになるべきことが多く、ロックにおいてヘビーなギターサウンドだったらドラムとギターは対等なバランスかそれ以上にギターが大きくあるべきかもしれません。ボーカル曲においてのボーカルのバランスは、アイドル的存在の人の曲なら曲の中でボーカルの存在感をきちんと確立し歌い手の魅力を全面に押し出さなければならないかもしれませんし、ピアノ弾きのボーカルアーティストの曲ではピアノを全面フィーチャーしつつボーカルはオケにうまく埋めつつきちんと聞こえるようなバランスを目さすかもしれません。
このように音楽ジャンルによって、またどんな人の音楽かによって考慮することは様々です。ケースバイケースで都度その音楽を理解しミックスすべきです。それを具現化することが最終的にいいミックスに繋がります。
さて、具体的な画一的な方法論っていうものはないものの、それを手助けする基礎テクニックをできるだけいっぱい身につければ、それが自分の引き出しとなります。
次回はそのための一つとして具体的な事例を書きます。お楽しみに!
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