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ミックス上達への道(序章その3・下準備をする)


さぁ、フリー素材を入手したら早速ミックスを練習…と心は早まりますが、まずはその前にミックスの下準備をしましょう。


みなさんはミックスを開始するときにどんな手順を踏んで進行していますか?、人によってそれぞれやり方は違うと思いますが、例えばこんな手順を踏んでみるとします…


A:下準備&ラフミックス

B:本ミックス

C:オーバーナイトミックス


と、このような三段階でミックスを進行するとします。まずは下準備ですね。



A:下準備&ラフミックス編


本格的にミックスを開始する前に、素材に対する下準備をするとその後の進行がスムーズになりますよ。まずその準備をしてみましょう。


Point:以下はProToolsで作業するにあたっての機能の名称で解説します。他のDAWの方の場合は、同様の機能に置き換えて参考にしてください。



0:作業前に「自分の基準となるリファレンス音源」を聞いて耳をリフレッシュ


いきなり「ゼロ」段階から始まってしまうことからもわかるとおり、準備作業のさらに前準備なのですが、この作業は大事です。


まず基準になる自分の耳を作ります。人は自分が思ったよりもそのときのコンディションで聞こえ方が違うものです。特に疲労している時などは顕著です。なのでその確認も込めて「自分の基準となるリファレンス音源」を試聴してコンディションを整えます。例えばレコーディングスタジオで多くのレコーディングエンジニアがその日スタジオに入るとまずCDをかけて聞いているのはこの作業も兼ねています。


Point:「自分の基準となるリファレンス音源」はどうやって選ぶのでしょうか?。人によってリファレンス音源は様々ですが、自分がいい音だなと思う音源とか、スピーカーやヘッドフォンなど再生機器の周波数レンジ感が理解しやすい音源とか、音のヌケ感を把握しやすい音源とか…ホント様々です。また音源をひとつに絞る必要はありません。いくつかの音源を次々にさっと聞いてリフレッシュするのもありです。


耳がリフレッシュできたら、素材に対する下準備にかかります。



1:ラフミックスで曲を理解

まずは曲を理解するために楽曲に添付のラフミックスがあればそれを聞いて、その作品の方向性、楽曲にある問題点などを洗い出しておきましょう。ここでは第一印象がとても大事なので、深く追求せずに第一印象で感じたことをささっと書き留めることにしておきます。段階0で聞いたリファレンス音源との印象の差異などもその手掛かりになりますね。


Point:ラフミックスの状態は人それぞれです。限りなく完成形に近いラフミックスを添付する人もいれば、とてもざっくりとしたラフミックスを添付する人もいます。完成形に近いラフを添付する人なら「こんな感じを基本に発展させてほしい」というメッセージかも知れませんし、ざっくりとしたラフを添付する人なら「方向性はお任せします」というメッセージかも知れません。ミックスする素材が実際に作者とやりとりする場合でその辺を読み取れない場合はまずは作者と打ち合わせをするべきだと思います。


もしも参考ミックスが無い時は、とりあえず全トラックのフェーダーを上げて曲の内容を把握します。その時にざっくりと最低限のバランスだけを整えてしまいます。



2:トラックの並べ替え

トラックの内容を把握するついでにトラック順の並べ替えも行うとミックスの効率が上がります。例えば音の役割順にするとか、音が出てくる順に並べ替えるとか…曲の内容を把握する上でも便利です。


通常のポピュラーな曲の場合、自分は、リズム楽器、ベース、コード楽器、オブリとなる楽器、メロ楽器や歌ものならボーカル、コーラスやハモリ…といった順番に並べ替えます。またその役割毎にトラックカラーを変えてパッと見で視認しやすくしておきます。例えばリズム楽器はブルー、ベースはパープル、コード楽器はレッド…などと、役割毎に色をつけます。


このスクリーンショットの例では、ドラムキットがブルー、パーカッションがパープル、SEがピンク、Bassがレッド、Basicなギターがオレンジ、ソロとオブリギターがイエロー、Basicキーボードがグリーンとなってます。

また、各役割の中にサブの役割があるときは(例えばリズム楽器の中でサブカテゴリーとしてドラムキットとループ素材がある時など)それ毎にも若干色を変える(例えばドラムは濃いブルー、ループ素材は薄いブルーなど)などする時もあります。


全体として役割毎に色で分けつつ、各パートセクションの中で音が出てくる順にトラックを上から下へ並べることで、初めての曲でもトラックの役割の把握が早くできるようになることもあります。


3:バランスと定位を整える

ざっくりバランスをとりながら各楽器の定位を探ります。ラフミックスがある場合はまずはラフミックスから作者の意図した定位を探ります。定位をあらかじめ決めてしまうと音と音同士の周波数の被りを未然に防げる可能性があります。定位を検討せずにミックスを進めると無駄な作業が増えてしまうことがありますので、バランスとともに定位を整えることは有用な工程です。



4:空間を整える

バランスをとりながら、必要な楽器にはリバーブなどの空間エフェクトをかけてみます。曲の内容にもよりますが、空間エフェクトはとりあえず曲の統一空間として一つのリバーブを立てて始めることからがいいでしょう。曲によってはリバーブが必要ない曲だったり、シーンによってリバーブが変わったり、ディレイが必要な曲だったりなど、曲の内容によって様々となりますので臨機応変に対処しましょう。


Point:一つのリバーブで空間を統一するのは有用なことが多いです。よく「オケとボーカルが分離してうまく混ざらない」と言った話を見受けますが、その原因の一つとしてオケとボーカルの空間が不一致になっているケースがあります。



5:作業効率を上げるマーカー

必要なマーカーなども打ってしまいます。マーカーを打つことで曲のロケーションを把握出来て、今後の作業のしやすさを確保できます。



6:トラックの状態を見極める


基本バランスが固まってマーカーなどの下準備が出来れば、ここで自分のラフミックスが出来たことになりますので一旦曲の状態を確認してみます。


さてここまでは基本的にEQやコンプは何もしてませんが、これは時に重要かもしれません。なぜなら、曲の状態をキチンと把握するには、現状で各トラックが全て混ざった状態でなければわからないことがあるからです。単独のこの音(音色)が好きか嫌いか…であらかじめ処理をしてしまってから曲の状態をジャッジすると、場合によってはアレンジの意図を見失ってしまう可能性があります。その音がなぜこうなっているのかをまずは把握するべきです。



7:今後の方針を考える、必要なこと、必要で無いこと


ここからは音源の内容次第ですが、ある程度〜曲によってはかなりイコライジングやコンプレッションなど様々なエフェクトを施さなければいけないことになるかも知れませんが、それはトラックの録音状況などによると思います。


ケースA:

もしもこの曲の録音を担当したエンジニア(やアレンジャー)が、素材にはなるべくエフェクトを施さないことを主義とする人なら、最終型がベストな楽曲になるようにそれなりのコンプレッションやイコライジングを色々としなければならないかも知れません。


ケースB:

それに対して、録音を担当したエンジニア(やアレンジャー)が、録音時にできるだけ完成型に近い形で録音していく主義の人ならば、ミックス時に必要なコンプレッションやイコライジングは少なかったり、稀な場合によってはほとんど要らなかったりするかも知れません。


ケースC:

反対に、トラックが完成型に近い形を目指し録音されているものの、その処理が残念ながらうまくいっていない場合は、その逆補正や修正という意味で様々なイコライジングやコンプレッション、またはエキスパンド処理などをしなければならないかも知れません。


Point:何でもかんでもプラグインをかけたりエフェクトしたり…は曲によって必要か必要で無いかを見極めていないことになります。時にはやらない勇気も必要です。



今日はここまで…また次回をお楽しみに!!


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